まちなかリボンサロン
ハイブリット形式で開催していましたが、現在はオンラインのみで行っています。

2025年9月6日(土)第164回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第164回まちなかリボンサロンでは、東京医科大学病院 栄養管理科 管理栄養士の丸山佳純先生を講師に迎え、「乳がんと向き合う食事〜あなたの体を支える栄養の力〜」と題した講演が行われました。治療に伴う体重の変化や食欲不振など、多くの患者さんが抱える悩みに対して、科学的な知見と日常に取り入れやすい工夫を交えて解説いただきました。

 

がん患者さんの半数は診断時点で既に体重が減少しており、治療が進むと8割以上の方が体重減少を経験するとされています。体重減少の要因には、治療や副作用により「食べられないために痩せる場合」と、炎症や代謝異常によって「食べても痩せてしまう場合(悪液質)」の2つがあります。

悪液質では、体内の炎症性サイトカインが筋肉や脂肪の分解を促進し、肝機能の低下や食欲の減退も引き起こします。その結果、免疫力や体力の低下、感染症や治療合併症のリスク増加につながり、生活の質(QOL)にも影響します。丸山先生は「栄養状態と筋肉量を維持することが、治療を続けるために極めて重要です」と強調されました。

筋肉量をチェックする簡単な方法として「ふくらはぎを指で囲む」「片足で椅子から立ち上がる」といったセルフチェックも紹介されました。

 

治療中に特に意識したいのは、エネルギーとタンパク質のバランスです。
さらに、次の栄養素を積極的に取り入れることが勧められました。

  • EPA(青魚):炎症を抑え、筋肉維持や免疫力の向上に期待
  • BCAA(肉・卵・大豆製品など):筋肉合成を助ける
  • カルニチン(ラム肉・牛肉など):エネルギー産生や倦怠感改善に有効

また、「主食・主菜・副菜」をそろえることで自然と栄養バランスが整うとのこと。忙しい時でも、コンビニのサラダチキンやパックご飯、野菜サラダを組み合わせるなど、工夫次第で簡単に実践できると紹介されました。

 

治療中はさまざまな症状で食事が難しくなることがあります。丸山先生は、症状ごとに工夫できるポイントを具体的に挙げられました。

  • 食欲がない時:三食にこだわらず、少量・好みのものを。リゾットやサンドイッチなど主食+主菜を一度に摂れるメニューが効果的。
  • 吐き気がある時:冷たい料理や匂いの少ないものを選ぶ。
  • 口内炎の時:柔らかく滑らかな料理にし、辛味や酸味は避ける。
  • 味覚障害の時:口腔内を潤す、柑橘類や亜鉛を摂る、味付けを少し濃いめにするなど工夫。
  • 便秘の時:水分補給と野菜・穀類で便のかさを増やす。軽い運動も有効。
  • 下痢の時:水分を十分に摂り、脂肪や食物繊維の多い食品は控える。

 

「治療中は痩せる」と思われがちですが、ホルモン療法やステロイド投与によって体重が増えるケースもあります。肥満は乳がんのリスクを高めることがわかっており、体重管理は再発予防の面でも大切です。

急激なダイエットは筋肉量の減少を招き、免疫力や体力を損ないます。推奨されるのは月1kg程度のゆるやかな減量です。例えば毎日240kcalを食事や運動で調整すれば、1か月で1kg減を目指せます。

  • 食事の工夫:お菓子やアルコールを控える、ご飯を数口減らす
  • 運動:1日30分のウォーキングを継続する
  • 生活習慣の見直し:朝食を抜かない、よく噛んで食べる、遅い夕食を避ける

こうした小さな積み重ねが健康的な体重管理につながるとのことです。

 

丸山先生は最後に「食事は治療を支えるだけでなく、日々の生活を豊かにする力でもあります。無理をせず、できることから始めましょう」と呼びかけられました。

乳がんと向き合う毎日の中で、食事は心と体を支える大切な基盤です。今回の学びをそれぞれの生活に取り入れることで、治療中でも自分らしく前向きに過ごす力になるのではないでしょうか。

次回、令和7年10月4日(土)の第165回まちなかリボンサロンは、広島大学病院 看護部山口 眞由美 先生に、「乳がんと生活 ~自分らしく生きる~ 」をテーマにご講演いただく予定としております。詳細が決まり次第、改めてホームページ上でお知らせいたします。

2025年8月2日(土)第163回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第163回まちなかリボンサロンでは、島根大学医学部附属病院 乳腺センター 角舎 学行 先生をお迎えし、「自分でできる乳がん治療 〜乳がんにならない生活習慣〜」をテーマにご講演いただきました。

角舎先生は、がん予防について「特別なことではなく、日常の積み重ねが重要」と語り、乳がんを含むがんの発生メカニズムや、私たちができる生活習慣の工夫について、わかりやすくご説明くださいました。

 

まずは、「がん細胞は毎日私たちの体で生まれているが、免疫機能がそれを排除している」と話されました。とくに、がん細胞の排除には「自然免疫」と「獲得免疫」の両方が関与しており、体内の異常を早期に発見し、適切に排除することで健康が保たれているとのことでした。

こうした免疫力は、加齢やストレス、生活習慣などによって低下していくため、規則正しい生活、睡眠、運動などが重要であると強調されました。

続いて、乳がんのリスク因子について解説がありました。

 

乳がんの発症には、大きく分けて「環境因子」と「遺伝的因子」が関わっています。環境因子としては、飲酒・肥満・運動不足・喫煙などがあげられ、日常生活で見直すことが可能です。一方、遺伝的因子には、BRCA1やBRCA2といった遺伝子変異が知られており、家族歴がある方は特に注意が必要とされます。

また、「女性ホルモン(エストロゲン)に長期間さらされること」がリスクの一つであることから、初潮が早い、閉経が遅い、妊娠・出産・授乳歴がない、といった背景も乳がんの発症に関係すると説明されました 。

さらに、乳がんの発生メカニズムとしては、遺伝子の変異、細胞の異常増殖、免疫による排除の失敗が関与しており、これらが複合的に重なることでがんが発症するとされました。

 

そのうえで、乳がんリスクを下げるために推奨される生活習慣として、次のような行動が紹介されました。

体重を減らすこと:閉経後の肥満は乳がんリスクを上げるため、適正体重の維持が勧められました。

 

運動を習慣化すること:日30分程度の運動(散歩等)により、全死亡率、乳がん死亡率ともに大幅に低下するという研究結果が紹介されました 。

また、乳がんは比較的若い年代から発症する可能性があるため、「25歳ごろからセルフチェックや乳がん検診などを意識することが大切」と話されました。特に定期的な検査によって早期発見につながるため、自覚症状がなくても受診する習慣づけが重要です。

講演の締めくくりには、「食事を工夫してダイエットすること、一日30分の運動をすることを努力して続けて欲しい」との言葉がありました。日々の積み重ねが、乳がんを含むがん予防に確実につながるとの前向きなメッセージが印象的でした。

次回、令和7年9月6日(土)の第163回まちなかリボンサロンは、東京医科大学病院 栄養管理科 丸山 佳純 先生に、「乳がんと向き合う食事 ~あなたの体を支える栄養の力~ 」をテーマにご講演いただく予定としております。詳細が決まり次第、改めてホームページ上でお知らせいたします。

2025年7月5日(土)第162回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第162回まちなかリボンサロンでは、そうごう薬局 天神中央店で薬剤師としてご活躍されている江淵 愛(えぶち あい)先生をお迎えし、「調剤薬局を使いこなそう ~あなたの治療の最強サポートを作る方法~」をテーマにご講演いただきました。

 

講演の冒頭では、調剤          薬局が「薬をもらうだけの場所」ではなく、患者さんの治療や生活に寄り添い、支える存在であることをお話しいただきました。特に乳がんの治療では、体調や副作用、生活への影響が大きいため、薬剤師が果たす役割もとても大きくなっているとのことでした。

 

その中でも「かかりつけ薬剤師制度」についての説明は、多くの参加者にとって新しい情報となりました。この制度を利用することで、24時間体制での相談や、薬の飲み合わせ・副作用のチェック、服薬の一元管理といったサポートを継続的に受けられるようになります。江淵先生からは、「薬局にはこんな機能もあるんですよ」と、制度を上手に活用することの大切さがわかりやすく紹介されました。

 

また、日常の中で起こる小さな体調の変化や、薬に関する不安も、気軽に薬局に相談してよいこと。そして、必要があれば薬剤師が医師に直接連携して情報を伝えることもできるという、安心できるサポート体制があることも強調されました。

 

講演では、実際の患者さんのケースをもとにしたエピソードも紹介されました。抗がん剤治療が始まる前から、ウィッグの試着や頭皮ケアのアドバイスを受けられるようにしたり、LINEで副作用の相談を受けたりと、日常生活と治療をつなぐ細やかな支援が行われていることが伝えられました。

さらに、「健康サポート薬局」や「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」といった薬局の種類にも触れ、それぞれがどのような機能を持っているのか、がん治療中にはどんな薬局が頼りになるのかについても説明がありました。

 

講演の終わりには、「治療を支えるチームの一員として、薬局もどんどん活用してください」と笑顔で語られました。「困ったことは一人で抱え込まず、まずは薬剤師に話してみること」が、より安心して治療を受ける第一歩になるという、心強いメッセージで締めくくられました。

次回、令和7年8月2日の第163回まちなかリボンサロンは、島根大学医学部附属病院 乳腺センター 角舎 学行 先生に、「自分でできる乳がん治療 〜乳がんにならない生活習慣〜」をテーマにご講演いただく予定としております。詳細が決まり次第、改めてホームページ上でお知らせいたします。

2025年6月7日(土)第161回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第161回まちなかリボンサロンでは、第一三共ヘルスケア株式会社に勤務されている看護師の東島愛美先生をお迎えし、「がん治療中に起こりやすい皮膚症状と日常から取り入れたいスキンケア」をテーマにご講演いただきました。

今回の講演では、乳がんの治療を受ける中で多くの方が気になる「皮膚のケア」について、看護の視点から丁寧にご説明いただきました。

 

はじめに、スキンケアの基本について、「皮膚を洗って清潔に保つこと」「しっかり保湿をすること」の2点がとても大切であることが強調されました。特に放射線治療を受けている患者さんにとっては、治療部位の皮膚が乾燥したり、赤くなったり、時には皮がむけてしまうこともあり、毎日のスキンケアが皮膚を守る大きな力になるというお話でした。

 

具体的には、ボディソープは刺激の少ないものを選び、泡で優しく洗うこと、タオルでこすらずにそっと押さえるように拭くことなど、日常生活ですぐに実践できるケア方法がたくさん紹介されました。また、入浴後はなるべく早く保湿剤を使うこと、季節や肌の状態に応じてローションやクリームなどを使い分けるとよい、とのアドバイスもありました。

 

さらに、照射後の皮膚症状には個人差があるため、「みんな同じ症状になるわけではない」ということもお伝えくださいました。症状が出たときには、無理に我慢せず、医師や看護師に相談してほしいというメッセージが繰り返され、安心して治療を受けるための体制が整っていることを実感できる内容となりました。

また、紫外線対策についても触れられ、放射線治療中は治療部位に日焼け止めを塗ることは避けた方がよいこと、代わりに衣服でカバーする工夫をすることが望ましいと説明されました。

 

講演の後半では、参加者の方々からの質問にも丁寧に答えてくださり、「いつまでスキンケアを続けたらいいの?」「どの保湿剤がいいの?」といった具体的な疑問にも分かりやすくご対応いただきました。

先生は、「正解はひとつではなく、自分の肌に合った方法を見つけることが大切」とお話しされ、治療中の心と体に寄り添ったケアの大切さを温かく伝えてくださいました。

 

講演の最後には、「スキンケアはがんの治療を支える大切な土台。気になることがあれば、遠慮せず医療スタッフに相談してくださいね」と優しく締めくくられ、参加者からは「今後は成分を見て選ぼうと思った」「保湿が大切だという事を改めて実感した」といった声が聞かれました。

次回、令和7年7月5日の第162回まちなかリボンサロンは、そうごう薬局天神中央店
薬剤師江淵 愛先生に、「乳がん治療による副作用とうまく付き合うための工夫とケア」をテーマにご講演いただく予定としております。詳細が決まり次第、改めてホームページ上でお知らせいたします。

2025年5月10日(土)第160回まちなかリボンサロン(WEB形式)開催の報告

第160回まちなかリボンサロンでは、県立広島病院 放射線治療科の土井 歓子先生をお迎えし、「知って安心!乳がんに対する放射線治療の基本と最新情報」をテーマにご講演いただきました。

  

講演の前半では、先生のご所属である放射線治療科の施設や、最新の放射線治療装置の特徴について、実際の写真を交えながらご紹介いただきました。治療機器は、正確な照射を可能にするために様々な画像誘導システムを搭載しており、近年では体に線を引かずに位置合わせができるシステムなども導入されているそうです。

  

また、放射線治療は「熱くも痛くもない」治療であること、治療中も普段通りの生活ができることなど、安心できる情報が多数共有されました。

 

続いて、乳がんの治療において放射線治療がどのような役割を担っているのかについて、わかりやすくご説明いただきました。乳房温存術を受けた方には、目に見えないがん細胞を抑える目的で放射線治療が行われることが基本となっており、その効果については医学的な裏付け(研究データ)も多く示されているとのことでした。

また、年齢や病状によっては照射を省略できるケースがあるという最近の研究結果も紹介され、治療は一人ひとりに合わせた柔軟な選択が可能であることが語られました。

 

講演ではさらに、鎖骨や脇の下などへの照射が必要な場合の治療方法の違いや工夫、そして近年注目されている「定位放射線治療」についても触れられました。これは高精度な技術を活かして、がんのある場所にだけ強い放射線をピンポイントで照射する治療法であり、手術が難しい場合にも大きな効果が期待されているとのことです。

 

また、「オリゴ転移」といって、遠隔転移がごく少数の場合に局所照射で対応するという新しい考え方も紹介され、最新の治療動向を知ることができる貴重な機会となりました。

講演の最後には、「放射線治療が必要かどうか、どのような方法が適しているかは、ご自身の病状や価値観に応じて、まずは主治医の先生とよく相談することが大切です」と語られました。

治療の選択肢が広がる中で、自分にとって納得のいく選択をするためにも、正しい情報にふれ、安心して治療に臨めることが大切であると、温かいメッセージを添えて締めくくられました。

次回、令和7年6月10日の第160回まちなかリボンサロンは、スキンケアについてをテーマにご講演いただく予定としております。詳細が決まり次第、改めてホームページ上でお知らせいたします。